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北村彰秀

東 洋の翻訳論 V

――蔵蒙対訳「学者 基本典」を出発点として――

北村彰秀著(個 人出版)  A5版 全80ページ、定価 700円(税別)

― 著者 より ―
 

 「東洋の翻訳 論」「続 東洋の翻訳論」に続く、とりあ えずの完結編である。

「東 洋の翻訳論」においては

仏典モンゴル語 訳の際に編まれた「学者基本典」と呼ばれる辞書の序文にある翻訳論を紹介した。

また、
 「続  東洋の翻訳論」においては

仏典漢訳の翻訳 論を全体的に眺め、また中国近代の林語堂の翻訳論にも触れ、「学者基本典」の翻訳論との比較を試みたが、

(詳しい内容は 翻訳通信200910月号に掲載)

本書において は、テーマごとの記述とした。主なテーマは
 

◎ 仏典漢訳の翻訳論はどのようにしてチベット、モンゴルに伝わったか
◎仏典翻訳における専門用語の取り扱い方
◎仏典翻訳用の辞書のユニークな性格
◎仏典の漢訳、チベット語訳、モンゴル語訳において自然な訳、わかりやすい訳、文学的な訳の出て来た次第
◎清朝多言語社会における翻訳状況

 3 巻全体を読み進むにつれ、読者の目の前に、2000年近くにわたる翻訳の歴史が、大河ドラマのよう に浮かび上がってくることであろう。場所はインドから漢民族居住地域、チベット、モンゴルに及ぶため、まさに広域大河ドラマとでも言うべきものである。

長編小説にでき なかったのは残念である。著者の方法は歴史記述、また歴史の検討である。

論文に近いもの なので、冷静な文章となるように努めた。しかし出来上がったものをみると、相当にラジカルなものになった。わたしはただ、先人がどのように翻訳に取り組ん だかの事例をあげ、検討を加えただけなのであるが・・・いや、弁解はやめよう。生産的な議論なら、わたしは受けて立ちたい。

 何であれ、歴史から学ぶこ との重要性は論を待たない。ただ、歴史というものは、今晩のおかずは何にしようかというような、目の前の問題にすぐに答えを出してくれるものではない。し かし、翻訳や翻訳論の歴史は、一般の歴史とは異なり、現実的な示唆に富んだものである。例えば、日本語に訳せない語はカタカナ表記にすべきか、翻訳口調は よしとすべきか等々の課題と取り組むにあたって、参考となるいろいろな先例を提供してくれる。

 この第3巻は 完結編のつもりである。しかし、本書の問題提起は、むしろスタートであるのかもしれない。例えば、

 

◎翻訳口調の歴 史、是非、我々の取るべき道
◎漢民族独自の 美意識
◎自然な文章と は何か
◎中身を訳すの か、言葉を訳すのか

等々。それぞれ が、1冊の本になるような大きな課題である。

本書は、翻訳者 にとっては、いろいろな示唆を提供し、また、翻訳者としていかにあるべきかという問題を考えさせるものとなるであろう。

また、研究者に とっても課題提供の書であり、同時に、他の書物からは得にくい情報を提供するであろう。

(次第に東洋に おける翻訳についての研究が盛んになってきているし、また、その方面の文献も出ているが、この3冊 のシリーズには、他の文献からは得にくい情報を盛り込むように努めた。また、本書のようなアプローチは今までにないものであると信ずる。)

 いずれにせ よ、言葉の問題を真剣に考え、取り組むすべての人にとって、かなりの刺激となるものであると信ずる。

 専門家でなく とも十分理解できるようにできるだけわかりやすく書いたので、多くの方に読んでいただければ幸いである。

(モンゴルで印 刷のため、第1巻は多少インクの濃淡あり。ただし、読みにくいほどではありません。)

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