おすすめしたい韓国の本
福田 知美
わたしの英語勉強法

 ここでは、私が興味深いと感じた韓国の本や今韓国で話題の本を毎月紹介していく。この記事を通して、少しでも多くの読者の方に韓国の良書を知って頂き、 韓国に親しみを持って頂ければ嬉しく思う。   
 今月紹介する本は『わたしの英語勉強法 (原題:나의 영어 공부 이력서) 』だ。本書では、年齢・性別が様々な韓国の英語上級者17人が自身の英語の勉強法を詳しく伝授している。17人の英語上級者が綴った英語勉強法は多種多様 で、文法や会話を磨くものもあれば、TOEIC・TOEFLなど各種試験の準備方法、さらには、勉強の動機づけを高める方法などもある。韓国語は日本語と 文法がほぼ同じであるため、本書は日本人にとってもためになると言える。
 本書から学べることは、国内で安く効果的に英語を勉強する方法がいかに多いか、という点だ。わたしたちは、英語を勉強する手段といえばすぐに留学や英会 話教室などを思い浮かべがちである。実際、英語力上達のために今まで何十万、中には何百万円も投資した方もいるのではないだろうか。しかし、本書の著者に は留学に行ったことがない人も多く、中には英会話教室にさえ通ったことがない人もいる。また、英会話教室に通ったとしても、そればかりに頼るのではなく、 自発的に学習に取り組んでいる人ばかりだ。
 著者のある男性は18カ月間独学で英語を勉強し、全国大学生英語ディベート大会で2位となった。また、著者のある女性は留学に一度も行かずにTOEIC の勉強を始め、開始後わずか4カ月で900点を突破している。どちらもかなり高い壁だが、彼らは独自の勉強法と努力でそれを乗り越えたのである。本書に は、彼らがどのようにしてこのような偉業を成し遂げたのかが詳しく書かれている。
 本書の1番のアピールポイントは、韓国で刊行されたということにある。韓国はアジアで最もTOEICの平均点が高く、有名企業に入る学生は大部分が 900点を超えている。大学の編入や就職活動など何をするにも英語が必要になってくるため、大学を休学して留学に行くこともよくある(私の友人の中でも大 学を休学して英語の勉強に励む学生が多くいた)。このようなハイレベルな競争の中で英語力を磨いてきた著者たちが執筆し、多くの読者から高評価を得た本書 はかなり信頼が置けるといえる。何度も英語の勉強に挫折した方がいれば、ぜひ本書を読んでいただきたい。17人の様々な学習法やモチベーションを維持する 方法の中から、きっと自分に合ったやり方が見つかるはずだ。
わたしの英語勉強法
題名:わたしの英語勉強法
原題:나의 영어 공부 이력서
頁数:264頁
著者:キム・ミンシク、他16名
出版社名:ブッキー
発行:2008年1月18日
著者紹介:韓国の英語上級者17人。学生、教師、アナウンサー、軍人、主婦など、多種多様な分野で活動しながら日々英語の勉強に努めている。


 17人の著者の中で、最も私の印象に残ったキム・ミンシクさんによる独学の英語勉強法の一部をここで紹介したい。キム・ミンシクさんは先ほど例に挙げ た、全国大学生英語ディベート大会で2位となった人物である。大会の相手には、アメリカの中高を卒業しソウル大学に特例で入学した学生もいた。そのような ハイレベルな大会において独学の英語で2位になることができたキムミンシクさんのとっておきの勉強法の一部である<音だけを聞いて書き取る勉強法>を以下 に紹介する。
 
「書き取りをしよう。聞こえるままにとにかく書き取ろう。(中略)本を見ながらテープを聞くと、その文章の単語が全部理解できているような気になってしま うが、実際は聞こえる単語だけが聞き取れており、聞き取れない単語は死んでも聞き取れていないものだ。“初級会話ぐらいなら全部聞き取れるだろう!”と おっしゃる方。本を閉じて書き取りをしてみてほしい。どういう意味かが分かる文章でも、書き取ろうとすると意外に聞き取れない部分が多いはずだ。だが、単 語1つが聞き取れないからといってすぐに諦めて本を開いてはいけない。音だけで綴りを推測していき、辞書をくまなく探してみよう。英語は発音記号からなっ ている表音文字であるため、どんなに難しい単語でも根気よく綴りを組み合わせると見つけ出すことができる」
 英語力を上げるためには、とにかく聞こえたままに単語を書き取る必要がある。分からないといってすぐに答えを見るのではなく、分かるまでずっと聞き続け ることが大切だと著者は主張する。
 「書き取りをする最も大きな理由は、自分の頭の中にある国産英語との別れのためだ。牛乳1杯、つまりglass of milk を私はいつも“グラス・オブ・ミルク”と読んでいた。しかし、書き取りをしてみるとネイティブスピーカーの発音では“グレッソッミヨック”(※1)のよう に聞こえる。グレッソ、ミヨック? ワカメに喧嘩を売っているのか? 始めのうち、私はこんな単純な文章も音だけを聞いて書き取ることができなかった。経 験を通して、だんだんと単語の最後に来る子音は音が消え、子音の前にあるLは発音されなくなる、ということなどが分かってきた。これは文法で説明できる問 題ではない。“グレッソッミヨック”を聞いてglass of milkを導き出す過程、このような書き取りの勉強は、結局、私の頭の中の国産英語と決別させ、ネイティブスピーカーの英語に出会わせてくれたのだ」
 ※1韓国語で“グレッソ”は“そうだったよ”、“ミヨック”は“ワカメ”を意味す る。韓国人がglass of milkをネイティブの発音で聞くと“そうだったよ、ワカメ”という不思議な言葉に聞こえる。

 「もちろん、この学習法は大変である。しかし、会話教材を聞きながら独学で勉強しようとする者のほとんどは初級では順調に進むが、中級や上級会話に入っ た途端学習効果と意欲が落ちてやめてしまうケースが多い。初級で聞き取れない単語を文章の意味が分かっているからといってなおざりにすると、結局中級や上 級で壁にぶつかってしまう。聞き取れない単語は簡単にあきらめずに最後まで根気よく聞き取ろうとする努力が必要だ」
多くの学習者は初級会話を甘く見てしまいがちだが、“やさしいレベルのものから疑問を確実に潰していく”この作業が後の勉強で大きく生きてくるのである。
この本には、他にも様々な英語の学習法が紹介されている。一部著者の勉強法を簡単に紹介する。

★ジョン・ヘムンさんの「TOEFLを集中的に短期間で終わらせる方法」
1. 緻密に計画を立て、できる限り実行しよう
2. 聞き取れるまで何度でも聞きなおそう
3. 段落の中心の内容を把握しよう
4. 語彙力の勉強では、同義語を把握しよう
5. スピーキングの練習はうるさい場所で
6. ライティング、模倣は創造の母だ
7. スタディーグループを活用しよう

★ジ・ヒョンシルさんの「文法、暗記ではなく体で覚えよう」
1. 文法は英語の骨格だ
2. やさしい文法書を何度も解こう
3. 簡単で興味がわく英語の文章を読もう
4. 簡単な言葉を書いてみよう
5. 文法の勉強自体を目的と考えてはいけない

★ハン・ジファンさんの「読解、及び語彙の勉強法」
1. 好きな作家や興味のわく作品から始めよう
2. 単語は読み飛ばしても構文は確実に押さえよう
3. 1、2ページだけでもいいから毎日読もう
4. 好きな勉強をしよう


本書に対する韓国読者の感想(韓国のインターネット書店YES24「会員のレ ビュー」より)
 この本に登場する著者の中には、平凡な主婦もいれば、まだ大学生もいる。有名な英語 講師の話ではなく身近な立場の人の話であるためより共感ができる。(中略)今年は著者たちが教えてくれた話を通して英語を勉強する目的を設定して動機づけ をし、勇気と自信と根気を持って取り組みたい。
(ペンネーム:은빛연어)

 自分に合う勉強法を探すために英語カフェなどでいろいろと質問をしてきたがなかなか見つからなかった。本書は、私に多くの勉強法を教えてくれた。(中 略)実際に本書で気に入った2つの方法を実践しており、それらは私が英語を勉強していく上で大きな助けとなっている。私は、英語の勉強をしたいが適切な勉 強法を知らないという友人に本書をおすすめしたい。この本があれば、比較的に試行錯誤をあまりせずに自分に合った勉強法を見つけられるからだ。(ペンネー ム:loww99)
(2010年11月号)